首相が「大至急」と呼びかけたPHPの脆弱性。お問い合わせだけのために、大掛かりなシステムを抱えていませんか

コラム|2026年10月26日|DXプラナ代表 花村 剛

いまはWordPressとPHPの大掛かりなシステムの中で、使っているのはお問い合わせだけ。AIと相談して選び直すと、見た目は画面から写し、データは写してそのまま使い、お問い合わせの仕組みだけを小さく作り直す。何を残すかは人が決め、作る作業はAIに任せる。

10月21日の夜9時55分、高市首相がXに投稿しました。「皆様に、今夜に対応して頂きたい大至急のお願いです。」ホームページを動かす仕組みとして広く使われているPHPに、重大な脆弱性が2件見つかったためです。国家サイバー統括室も、Xで準備を呼びかけていました。

首相の投稿は、10月25日までの4日足らずで、Xの表示回数が1億回を超えました。それだけ関心を集めたのは、多くのサイトが同じ仕組みの上に乗っているからでもあります。世界のウェブサイトの4割強は、PHPで動くWordPressで作られています。

使っているのは、ほんの一部なのに

私がお手伝いしている会社のホームページも、WordPressで動いています。今回の脆弱性には応急の更新で備えましたが、いま使っている版のPHPは12月31日でサポートが終わります。PHPを更新するにはWordPressも更新しなければならず、テーマやプラグインの組み合わせによっては、ページの見た目が崩れることがあります。

この会社がページを修正するのは年に数回で、記事の投稿もありません。公開しているページの中で、動きが必要なのはお問い合わせのフォームくらいです。それでも脆弱性が見つかるたびに、大掛かりなシステム全体の更新と確認に追われます。正直に言うと、理不尽だと感じました。

1990年代の後半、ニュースの一覧は、データベースと小さなプログラムで作っていました。WordPressという決まった箱に中身を流し込めば誰でもホームページを持てるようになったのは、その後のことです。便利にはなりましたが、その箱も年々大掛かりになりました。

AIと相談しながら、選び、直す

大掛かりになる一方の箱を用意して、その中の限られた機能だけを使う。それよりも、本当に必要な機能をAIと相談しながら十分に精査し、必要最低限の部品で組み上げるほうがよいと、私は考えています。当社のホームページは、10月8日にWixから自前の仕組みへ移しました。ページは静的なHTMLで、動きがあるのはお問い合わせだけです。

そのお問い合わせのフォームも、先日、PHPを使わない小さなプログラムで作り直しました。夜の9時過ぎに要件をAIに渡し、1時間ほどやり取りして判断の基準を伝えてから寝ると、翌朝8時過ぎには本番で動いていました。私が手を動かしたのは、夜のやり取りと朝の設置・確認を合わせて、約2時間10分です。この経過は、次のコラムで詳しく書きます。

作った後の手入れも、AIに頼んでいます。そのために、サイトを移した後、ひとつ仕組みを用意しました。私がチャットで「ここをこう直して」と頼むと、AIが元のファイルを直し、確認用のサイトに出します。本番に移すのは、私が確かめてからです。先日、検索エンジンの管理画面に「ページの題名が短い」という指摘が出たときも、AIが案を出し、私が文言を決めて、その日のうちに本番まで直りました。脆弱性の注意喚起が出たときも、AIに調べさせれば、自社で使っている部品が該当するか、何をすればよいかの案が出てきます。その案を確かめてから、手を打ちます。

移すときは、三つに分けて考える

「WordPressから移すとなると、全部作り直しになる」と感じて、ためらう方は多いと思います。WordPressでは、データと見た目と処理が強く結び付いているので、移行が大工事に見えるのも無理はありません。

ソフトウェアの設計には、この三つを分けて考える「MVC」という考え方があります。M(Model)は中身のデータ、V(View)は見た目、C(Controller)は、データを取り出して見た目に流し込む処理です。WordPressでは、PHPで書かれたWordPress本体とプラグインがCを担い、MとVもその決まりに合わせて作られています。三つに分けてみると、移すときに大きく作り直すのは、主にCだと分かります。

Vは、多くの場合、画面から写せます。ページは最後はすべてブラウザの画面に出ているので、そこから逆にたどれば、ほとんど同じ見た目を作れます。Mのほうは、データベースの中身を書き出し、形を整えれば、新しい仕組みで使えます。整え方も、AIに案を出してもらえます。画像などの素材も、WordPressが預かっているだけです。残るCは、実際に使っている処理の分だけを書き直せば足り、書く作業はAIに任せられます。お問い合わせのような動く部分は、画面からは写せないので、ここで作り直すことになります。

料理でいえば、器と食材は新しい店に持っていき、厨房の設備だけを入れ替えるようなものです。ただし、ページの住所(URL)を引き継ぎ、検索での評価を落とさないようにする作業は、別に必要です。

移すときは、メニューを見直す機会にもなります。ほとんど注文のない料理まで、新しい店に持っていくことはありません。どのページがよく見られ、どのボタンが押されているかは、アクセスの記録で分かります。その数字をもとに、残すものだけを選んで整理します。

選ぶ基準は、人が持つ

ただ、組み合わせが自由になる分、何を基準に選ぶかを決めずに作ると、作った人にしか分からない一品物ができてしまいます。後から直すときも、作った人に頼るしかなくなります。そうならないために、何を基準に選ぶかを先に決め、言葉にして残しておきます。

お問い合わせのフォームを作り直したとき、最初にAIに伝えたのは「将来、お客様のサーバーにそのまま持っていける形にしてほしい」という一言でした。これで、使う部品も置き方も決まりました。そのほかにも、どこまで点検できたら完成とするか、問い合わせの記録をどう扱うかを、AIとのやり取りの中で私が決めました。問い合わせは全件を記録しますが、メールマガジンの配信リストには自動では入れず、担当者が内容を確かめてから決めます。記録も期限で自動的には消さず、担当者が管理画面から消すことにしました。

作ったものを点検すると、直すべき点が9件見つかりました。中には「同時に何通も送られると、回数の制限をすり抜けられる」というものもありました。すべて直したうえで本番の環境に置くと、今度は、本番に切り替えた直後にフォームの外枠が読み込めなくなるなど、試験の環境では出なかった誤りが3件出ました。原因は、どれも数分で突き止められました。最初の2件は出てから14分で直り、残る1件も直して、朝8時19分には、本番で試しの問い合わせが届くことを確かめました。

直感が、言葉になった

実は、Wixから移すと決めたのは、直感によるものでした。今回の騒ぎとフォームの作り直しを経て、ようやく理由を言葉にできました。当社で動くのはお問い合わせ一つだけで、そのために大きな箱を抱える必要は、もともとなかったのです。お問い合わせのフォームのときも、私は「お客様のところへ持っていける形」「記録は全部残す」と決めただけで、プログラムを書いたのはAIでした。AIは、私が書き出した基準に沿って案を出し、作業を進めました。ホームページに限らず、AIに仕事を任せるときには、同じように判断の基準が要ると考えています。当社が経営者の方と一緒につくっている「経営レシピ」は、会社の判断の基準を、AIが使える形に書き出した文書です。この記事の料理のたとえで言えば、店のレシピに当たります。料理のたとえは、サービス内容のページで詳しく書いています。

御社のホームページを、この1年で何回直したでしょうか。お問い合わせのほかに、動きが必要な部分はいくつありますか。答えが「年に数回」「お問い合わせだけ」なら、いまのシステムの大きさが、御社の使い方に合っているかを確かめてみてください。

ホームページの仕組みの見直しについても、ご相談を承ります。いまの仕組みを保つのにかかっている手間と、移した場合の見込みを、一緒に整理するところから始められます。何を残し、何を手放すか、その判断の基準づくりからお手伝いします。

お問い合わせ

出典:IPA(情報処理推進機構)のPHPの脆弱性に関する注意喚起(別のタブで開きます)(2026年10月21日)、高市首相のXの投稿(別のタブで開きます)と国家サイバー統括室のXの投稿(別のタブで開きます)(2026年10月21日。首相の投稿の表示回数は、2026年10月25日にXの画面で確認)、W3Techs(別のタブで開きます)(2026年4月時点。WordPressの利用率42.6%)

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